ほのかにひとつ
2010年 05月 23日
そんな日の昼ごろに友人から電話があり “今、山頂、視界360度眺望よし、連山美しく、空気美味にして快適なり”とのことでした。
無念さと、焦燥と、羨望が混じった複雑な気分で電話を聞きましたが、所詮、自分自身の体調管理が出来ていなかったことに依るもので、誰を恨む事も出来ません。
落ち込んだ気分を紛らわすためにパソコンをいじっていたら、昔作った写真集の原稿が出てきました。北原白秋の処女詩集「邪宗門」(1909年 明冶43年刊行)の中の “ほのかにひとつ” と題した詩を滋賀県長浜市の黒壁スクェアーで写した写真に付したものです。
今見れば詩と写真のアンマッチ、そして気障で鼻持ちならないものです。
芥子ひらく、ほのかにひとつ、 また、ひとつ、
やはらかき麦生(むぎふ)のなかに、軟風(なよかぜ)のゆらゆるそのに。
薄き日の暮るとしもなく、 月しろの顫(ふる)ふゆめじを、
縺れ入るピアノの吐息 ゆふぐれになぞも泣かるる。
さあれ、またほのに生(あ)れゆく 色あかきやみのほめき。
やはらかき麦生(むぎふ)の靄に、軟風(なよかぜ)のゆらゆる胸に。
芥子ひらく、 ほのかにひとつ、 また、ひとつ・・・・・